後ろ腰のたっぷりとした膨らみと扇状にひろがるトレーンは、クリノリン・スタイルからバッスル・スタイルへ移行した直後のスタイルである。
鮮やかな紫は、1856年に開発された化学染料、アニリンによって流行した。流行の要素を素早く引き上げて顧客たちを満足させたウォルトらしい作品である。
本品の作者、シャルル=フレデリック・ウォルト(1825-1895)はイギリス出身。1858年、パリでメゾンを設立した。マヌカンに着装させた新作の発表形式や、社交界のファッション・リーダー格の顧客の確保とそれに伴う巧みな広告戦略など、彼は後に「オートクチュール」と呼ばれることになるファッション・システムの基盤をつくり、19世紀後期のパリ・ファッションの地位を確立した。