カッティングの技と布自体の張りで、表情豊かでダイナミックな縦畝を作り出す本品は、バレンシアガが「鋏の魔術師」と呼ばれた創造力を証明している。この新しいシルエットは、花模様を織り出した張りのある絹ふくれ織りで創り出された。なだらかに後ろ下がりになった低めのウエストラインから、波型に裁断された横地使いのスカート部分と、多めに残された身頃側の縫い代が、特徴のある立体的で動きのあるスカートの縦畝を支えている。服のシルエットと着る人の体の均衡を保つのは、絹オーガンジーの総裏打ち、インサイド・ベルト、後身頃の縫い代に縫いとめられた錘である。旧来のように随所にボーンを内蔵したり、ホースヘアの支えを使うのではなく、バレンシアガの造形的な服の美しさは、服の裁断線と構造を刷新することで生まれた。
1955年のチュニック・ドレスや、57年のベビー・ドール・ドレスに代表される革新的な新しい服の法則を追究したバレンシアガ。本ドレスにはその完結した形が見えている。