シャネルの簡潔な膝丈の黒いドレス「プチット・ローブ・ノワール」の一例。「プチット・ローブ・ノワール」は、『ヴォーグ(米)』誌1926年11月号で、大量生産を本格化させたフォ一ド社の黒の単一モデルの自動車に例えて、「新時代の女性のユニフォーム」と評され、シャネルの代名詞とも言えるスタイルとなる。
第一次世界大戦後、中産階級の台頭、大量生産の本格化などによって社会の様相は一変し、女性の社会的自立は目覚しく進む。新しい時代の女性は日焼け、断髪など新風俗の先導者となり、自らの活動的な生活様式に適合する機能的な服を求めた。それはシャネルやヴィオネらが提案した、膝丈で直線的なラインの装飾を排除した簡潔なドレスとして具現化された。それまで店員の地味な制服や喪服などの色でもあった黒が、モダンな色として脚光を浴びた。