日本の伝統的な絹織物の一種、しぼの強い鬼しぼ縮緬を使用したワンピース・ドレス。森英恵は、日本ファッションを海外へ発信しようとした先駆的存在の一人だった。1965年のニューヨークでの作品発表にむけて、日本の伝統とはと考え、たどり着いたのが着物の生地であった。日本各地の産地を歩き、滋賀県長浜市の「鬼しぼ縮緬」と出会う。主に座布団用に作られるこの種の縮緬を、イブニングドレスに使い、鮮やかなオレンジ地に、ピンク、黄色、グリーンなど独特の色彩でプリントされた大柄のダリアが、訪問着のような格調の高さを漂わせている。
森英恵は、1977年パリ・オートクチュールに初参加し、以後、縮緬、帯地、紬、浴衣地などさまざまな日本の伝統的な素材を用いて、パリ・オートクチュール組合唯一の東洋人メンバーとして活躍した。