もろく崩れそうな装飾が特徴的な白一色のドレス。オートクチュールで発表された作品。一見しただけでは刺繍とも織物とも判別し難い現代的なテクスチャーを持つ表面は、コード刺繍の技法を用いて制作された。メゾンからの資料によると、総制作時間は120時間。そのうち50時間は世界的に有名な刺繍のアトリエ「ルサージュ」によるドレス表面の刺繍のために費やされている。伝統的な技法を用いながらも新しい感覚を取り入れた職人の手仕事による逸品である。
現代のオートクチュールを支えているのは、テーラードや刺繍など細分化された専門のアトリエにおいて培われてきた伝統的な職人技であるが、時代の流れと共にその職人数は減少し技術の継承が危ぶまれている。シャネル社はその保護のために多くの老舗工房を傘下においている。ルサージュは2002年、シャネル・グループの傘下に加わった。