ダイナミックなシルエットが、18世紀後期の服飾造型の一つの頂点を見せているドレス。左右に大きく張り出したスカートは、巨大な天をつく髪型でようやくバランスが保たれている。極限の人工美が、フランス革命前の王侯貴族たちの権力を虚しく顕示している。軽やかな絹タフタのガウンとペティコートは、リズミカルな手描きの花づな模様で飾られている。18世紀まで西欧では、柄物は主として織物によって作られていた。17世紀にインドや中国からプリントや手描きが導入され、18世紀に西欧で新しいプリント技術が芽生える。ロココ末期の本品は既に、重厚な絹織物への好みがすたれ、軽やかさが求められた次の時代を先取りしている。
また、この時代の髪型と被り物はどんな時代にも比して巨大になり、風刺画の格好の材料となった。風景や花壇に変わり、軍艦、馬車、果物籠などの奇想天外な造型物が載せられた。ル・グロら結髪師は建造物のように構図を取り、組み立て、整えた。しかし、その行き過ぎた余剰さは、既に貴族社会の終わりをはっきりと告げていると言えよう。