本品は背襞が裾まで続くローブ・ア・ラ・フランセーズである。ドレス全体には幾何学模様と草花模様が、表布と裏布の間に綿とコードを挟み込んだ繊細なキルティング・ステッチによってあらわされている。ステッチによる凹凸の陰影は、単色使いの絹サテンに豊かな表情をもたらしている。
キルティング技法は、非公式な場で着装された18世紀のペティコートに多く残されている。しかし、本品はドレス全体にキルティングを用いた希少な例である。本品の類例はロンドン博物館の収蔵品(AC89.56)にみられ、その作品は細かなモチーフを表現する高度な技法から、公式な場でも着装されたとされている。