金色に輝く贅を尽くした宮廷用衣装。特に18世紀の女性用宮廷服で最も人目を引くポイントである胸部を被うストマッカーは、輝きを放つ金糸のアップリケやレースで覆い尽くされている。そして、ガウンやペティコートにも金糸レース(メタル・レース)の装飾がふんだんに用いられている。
本品のテキスタイルは豪奢な絹織物の生産地として隆盛していたヴェネチア製。文様を織り出すための緯糸には、金糸2本と黄色の絹糸1本が使用されている。黄色の絹糸が地織となり、金糸は地織の経糸とは別糸に絡ませているため、文様の裏面は金糸が隠れて見えない。複雑で高度な技術を要するとりわけ贅沢なものと言えよう。ザクロ、カーネーションなどの植物柄に見られるオスマン様式の要素は、ヴェネチアが東西交流の拠点であり、貿易がもたらす富の象徴であることをこの作品は物語っている。