三宅の初期を代表する作品の一つ。「タトゥー」と題された本品には、日本の刺青に擬えたプリントが施されている。プリント・デザインは、1971年から三宅の仕事に参画したテキスタイル・デザイナー、皆川魔鬼子。
爛熟期を迎えていたヒッピー・ムーブメントの中、若者に圧倒的な支持を得ていたロック・ミュージシャン、ジミ・ヘンドリックスとジャニス・ジョプリンは、70年秋、共に20代で夭折した。本品は彼らへの、三宅の鎮魂歌であろうか。パリ・オートクチュールに学んだ三宅は、一握りの人のためにではなく、プレタポルテという新しいファッション・システムによって、世界の多くの人のための〈服〉を日本から世界に向けて打ち出そうとした。ロックと刺青、若者文化と伝統的な庶民文化のクロスオーバーには、彼の主張と時代性が強くにじみ出ている。