「トラペーズ(台形)・ライン」と名付けられたこのドレスは、まだディオールにいた若きサンローランの出世作である。1950年代のドレスには見られない、ウエストの開放、簡潔なシルエットが際立ち、次のAラインへの過程へ踏み出すものといえよう。緻密に計算したダーツやアイロンといったオートクチュールの高度な技術によって、明快なフォルムが表現されている。
ディオールの急逝後にメゾンを継いだ若きサンローランの最初のコレクションで発表された。華やかな色や柄、素材など装飾の要素を削ぎ落としたミニマリズムは、60年代の簡潔なミニ・ドレスを予告するものとして興味深い。