タイプライターを打ったり名刺を見ながら電話をかけたりするOL。《八時間》とは、労働基準法による勤務時間で、当時としては革新的な画題で、現実の社会面に飛び込む印象の姿が評価され、日本画は「近代の開眼」を得たとも評された。曲線と直線の組み合わせによる人体表現や幾何学的な空間処理にはキュビズムの影響がみられ、近代的な雰囲気を創りあげている。さらに、トーンを抑えたパステル系の色合は女性が働く場面の優雅さをよく表している。少し開いた扉の向こうの暗闇は、画面中央を引き締める一方で、現代社会の奥深さを象徴しているかのようである。