福島・会津若松の鶴ヶ城(若松城)に伝来した屏風。池長孟が購入後、現状の4曲の屏風に仕立て、金具なども新調している。対をなす4曲1双の騎馬図屏風は東京・サントリー美術館に所蔵されている。本図は、画面左から神聖ローマ皇帝ルドルフ2世、オスマン帝国スルタン、モスクワ大公、タタール・ハーンを表している。キリスト教と異教の王が対峙する図像だが、サントリー本はそうした配置ではなく、それぞれ動と静の構図をふりわけていると考えた方が自然だろう。騎馬像の原図は、アムステルダム刊行の1606~07年のウィレム・J・ブラウ世界地図を、1609年にカエリウスが改訂した大型の壁掛け世界地図(現存しない)の上部装飾にあると想定される。原図では20センチ前後の王侯たちの姿を等身大にせまる大きさまで引き伸ばしたうえで、ポーズや服飾などを改変している。イエズス会から当代の権力者への、禁教の緩和・貿易の継続を願うための政治的な意味を持つ贈り物とする仮説が現在では有力視されている。
騎馬像という主題、さらに地平線を設定し、馬や人物が画面「奥の空間」に体を向ける短縮法、事物の投影や肉付けの陰影など表現は西洋風だが、朱地に押された金箔、下書きに見られる墨の筆勢(X線調査による)、彩色の顔料などは日本画の手法である。