スキャパレリ(1890-1973)の「サーカス・コレクション」は、パリで万国博覧会が開催されている最中の、1938年2月4日に発表された。スキャパレリのコレクションの中でも、このコレクションは最も創造的なものの一つとされており、彼女は自伝の中で、このコレクションについて「最もおもしろく、粋なものだった」と語っている。
本作品は、ディタイム・ドレスとしても、イブニング・ドレスとしても着用できるドレス。生地にはサーカスから着想を得たモティーフが全面に配されており、子どものドローイングに似た大胆な絵柄と色遣いが特徴的である。テキスタイルのデザインは、画家のマルセル・ヴェルテスによる。ヴェルテスは、サルバドール・ダリやジャン・コクトーらと共に、スキャパレリとコラボレーションを行ったシュルレアリスムの画家の一人である。人を驚かすような、遊び心に富んだ彼女の作風は、シュルレアリスト達との交流から生み出された。また、目にも鮮やかなショッキングピンクは、しばしば「ショッキングな」服をつくっていた彼女のシンボルカラーというべき色である。