まるでクリノリンの時代を彷彿させるような、1950年代ファッションの典型が示されている。ボディスには5本のボーンが裏打ちされた構築的なフォルムだが、綿ピケと水玉模様の若々しい躍動感、それにアクセントを与えるパイピングは、現代的でカジュアル。後のファッションのカジュアル化を予測させる、堅苦しさを嫌った特徴が明快である。1954年に急逝したファット晩年の作品。1937年にパリでオートクチュールのアトリエを開いたファットは、40年には早くも人気メゾンとなり、第二次大戦後、米国における既成服の展開で成功を得た。優美な50年代ファッションに軸足を置きながらも「Alternative(伝統にとらわれない)」と評された、カジュアルな持ち味が特徴だった。