ジュエル・ビートル(玉虫)の前羽が留め付けられた軽やかなマル製ドレス。緑から紫へと変化しながら輝く羽が、ドレス1,942枚、ショール1,548枚確認される。
18世紀中期以降イギリスはインドを植民地化しており、19世紀から後期には西欧市場に向け、玉虫刺繍のさまざまな製品が輸出された。玉虫の羽を用いた美麗な衣装は、16世紀から19世紀中期にかけてインド半島を広く支配したムガル帝国で作られていた。金糸刺繍を伴った豪華なターバンや、マハラジャの結婚衣装に玉虫の羽が刺繍された事例が、デリーの国立博物館やジャイプールのマハラジャ・ジャイ=シン二世美術館に残されている。またインドでは宝飾品のデザイン画に玉虫の羽を用いた歴史があり、その技術が刺繍に活かされたという。