16世紀から17世紀にかけて活躍したフランドルの画家一族として知られるフランケン一族の中で、最も有名かつ重要な画家がフランス・フランケン(子)である。人物が多数登場する鮮やかな色調の小画面の作品を描き、その代表作はヨーロッパ各地の美術館に収蔵されている。絵が所狭しと並べられた陳列室を描く「画廊画」の創始者の一人で、このジャンルの第一人者ヤン・ブリューゲルにも影響を与えた。祭壇画も描いたが、精緻で優美な画風の小品の分野で本領を発揮し、歴史画、神話画、寓意画を得意とした。また、17世紀フランドルで独自に流行した貴重品キャビネットの装飾のための小絵画にも豊かな才能を見せた。このように、画面の大きさは小さくても、「奥行きのある空間」に「多彩な人物群」を「物語り性豊かに」描くことができたのである。
本作では、屋外で酒宴に興じる古代風の人物が描かれているが、この構図に大変よく似た同画家の作品が他にある。フランスのレンヌ美術館にある《シモン家の饗宴》(1637年)がそれで、背景の舞台装置は異なるものの、テーブルを囲む人物の構成に共通するところが多い。こうした主題は、おそらく作者の最も成功した画像のひとつなのだろう。崖を穿った洞穴の向こうに、緑なす風景がかすかに見える。このような遠近を示す空間設定で、手前の宴席では、身ぶりの異なるさまざまな人物が、赤、青、黄を中心に限られた色彩を効果的に使いながら、巧みに描きわけられている。小品でありながら、全体を大きな物語画のように見せる作者の典型的な作例といえよう。
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