画面を対角線で区切るように右上方から左下方にかけて、夥しいまでの松の緑の塊が連なり、左上方の金地空間と鮮やかな拮抗をなすような斬新で奇抜な構図である。大胆な構図法や松、桜の樹幹の描法など一見して宗達のそれを思い起こさせる。松といえば養源院の「松図」、緑の色面と金地の対比による効果と言えば烏丸光広賛の「蔦の細道図屛風」を連想するが、それらにごく近いともいいがたく、また程遠いともいえない微妙な作風を持つ。本図には落款、印章はないが、作者を宗達と推定すれば、「蔦の細道図屛風」にみられるような色面による抽象へと至る過渡期の頃の作品と考えるのが自然であろう。ともあれ、右上端に描き入れられた大輪の八重桜は、独特の盛り上げ彩色による厚みとかたちを備え、松葉の群れに負けじと咲き誇って、画面にひときわ興趣を添えている。
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