「平家物語」の中の源平合戦の名場面である宇治川先陣争いと一の谷合戦とを一隻に一場面ずつ描いた金地着色の屏風絵である。室町時代以来描かれてきた武者絵のなかで、この二場面を組み合わせたものが最も多い。赤色の使用が印象的で、周囲の添景である緑青による松や柳、群青の海や川の流れに映えて美しい。人物描写は細部まで丹念に行われている。一の谷合戦図では荒武者・熊谷直実(?-1208)と貴族的平家の公達としての平敦盛(1169-1184)の個性が対照的に描き分けられ、宇治川合戦図では佐々木高綱(生没年不詳)と梶原景季(1162-1200)の先陣争いが大画面に雄々しく繰り広げられている。