読み込んでいます

屈輪文堆黒輪花盆

不明14th Century

京都国立博物館

京都国立博物館
京都市, 日本

中国唐時代に興り、宋時代に著しく発達した彫漆(ちょうしつ)技法は、器物の表面に漆を何十層と塗り重ねて強固な面を作り、これに鋭利な刃物で文様を表す。本作品のように最上面を黒漆とするものを日本では堆黒(ついこく)と呼び、中国では剔黒(てきこく)という。堆黒のほかに、最上面が朱漆の堆朱(ついしゅ)、黄漆の堆黄(ついおう)、青漆(緑色)と朱漆を塗り重ねて彫りの深浅で色を違えた紅花緑葉(こうかりょくよう)などもある。
 本品では黒漆の層のあいだに7筋の朱漆の層が観察されるが、この線をシャープに見せるには、薄い漆の層を均質に厚く塗り重ねる技術やその各層を完全に固めるための長い時間、それに的確な角度を保って文様を刻む高度な彫りの技術を必要とする。
 中国製の彫漆で飾られた器物は、日本には鎌倉時代から室町時代にかけて、唐物の流行に伴って数多く輸入された。禅宗寺院の儀式で用いられたほか、書院飾に重用され、花盆、丸盆、香合、軸盆、天目台などが多くは格式の高い茶道具として現代まで大切に伝えられている。
 本作品の全面を覆う屈輪(ぐり)文は、彫漆やその模倣品である鎌倉彫において頻繁に用いられる文様で、くりくりとした形から来る日本での呼び名である。輪花盆の中でも珍しい9弁を持つ本作には、鋭敏な彫りによる小振りの屈輪文が同心円状に整然と収まっており、この配置をどのように計算したのか瞠目させられる。

一部のみ表示もっと見る
京都国立博物館

アプリをインストール

美術館を探索し、Art Transfer、Pocket Gallery、Art Selfie などで芸術作品をお楽しみいただけます

ホーム
発見
プレイ
現在地周辺
お気に入り