明治初期に活躍し、当時の風俗・風景画を数多く残した昇斎一景の代表作「東京名所四十八景」の揃物の一枚、師走の風物詩「歳の市」の様子です。明治の新時代を迎え、断髪し帽子をかぶった紳士も、ちょんまげ姿の江戸っ子たちも、大凧、しめ縄、若水桶、しゃもじ、海老やウラジロなど、新年を迎えるための正月用品や縁起物を我先にと買い求めました。江戸初期に浅草寺に始まった歳の市は、江戸中期になると深川八幡を皮切りに東京各地の寺社で次々と開かれるようになり、境内は多くの人で賑わっていました。その後、店舗商業の発達に伴い、伝統的な露店の歳の市は次第に姿を消しましたが、今でも浅草寺の羽子板市や薬研堀の歳の市などが人々に親しまれています。