この彫像は、風神をあらわした鎌倉時代の作品です。両手を左右に広げ、片足を大きく後方にはね上げながら前かがみに疾駆する姿は、躍動感に富み、手足や胴の隆起する筋肉、風にはためくように波打つ腰布は風神の激しく俊敏な動きをあますところなく表現しています。雷神と対になる風神は、天然現象を神格化した仏教の護法神で、一般的には風袋を背負う鬼の姿にあらわします。この像ももとは風袋をそなえた像であらわされていたものと思われます。体部は左右材を矧ぎ合わせ手足や頭部などを別材で作って組み合わせた、いわゆる寄せ木造りの技法でつくられ、複雑な姿勢を巧みな技法できわめて自然に、しかも力強く表現しています。鎌倉時代の溌剌とした豪快な躍動感と、物事を観念的にではなくありのままに見る写実的な態度とを感じさせ、見るものに元気を与えてくれる作品です。