現代のファッションの基礎を築いたといわれるポール・ポワレ(1879-1944)。デザイナー志望であった彼は、19世紀来宮廷を初めとする上流階級を顧客に持ち、伝統的な服作りを行っていたドゥセ店、つづいてウォルト店に勤める。しかし簡素で実用的な服を作ろうとするポワレはウォルト店を辞め、1903年に自身の店を開いた。1906年にはコルセットを用いない、ハイウエストのドレスを発表、西洋の服をラディカルに変革していく。
1911年に制作されたこのガーデン・パーティ・ドレスも、コルセットを用いないで着用されたもの。ハイウエストで、ほっそりとしたシルエットのドレスは、これより100年ほど前にフランスを中心に流行したエンパイア・スタイルを想起させる。これは、西欧で長らく着られていた体にぴったりと密着し、ウエストの細さを強調するドレスとは全く異なる作り方がなされている。直線裁ちにより生み出される生地のゆとりを活かし、そのゆとりが「自然な」身体のラインにゆったりと寄り添う。こうしたシルエットは、本作で用いられているオーガンジーなどの、しなやかで軽い生地を用いることで完成した。上身頃とスカートの裾には、ポワレが好んで用いたバラの模様がステンシルにより描かれ、それを囲むようにギャザーが寄せられている。簡素でありながら、その無垢なたたずまいが魅力的なポワレの代表作のひとつである。