ダダン・クリスタントは、新たな表現方法と社会的リアリティを追求した革新的な美術運動を学生時代に体験するが、そのことは彼の作家活動に大きな影響を与えた。本作品では、ワヤン・クリッ(影絵芝居)の平板なイメージから立体的な作品空間を創りあげるとともに、巨大資本によるゴルフ場建設を題材に、ユーモアと風刺に満ちた物語を紡ぎだす。軽快なスイングと、勢いよく飛び出すゴルフ・ボール。しかし、ゴルフという特権階級の単なる娯楽は、かたや抗しがたい暴力となって農民の生活を脅かそうとするのだ。ボールは大きな弧を描きながら次第にワヤン・クリッの鬼へと変貌し、最後には銃を片手に農民たちを荒野へと追いやる。このように、彼の作品では弱者の苦しむインドネシア社会の歪(ひず)みが鋭く指摘されるのである。