山本初期の代表作の一つ。意識的に施された穴が、直線的な裁断によるオーバーサイズの服に静かな陰翳を作る。穴は様式化された花模様で、縁はそれぞれ丁寧に始末されているが、まるで着古したかのように見える。パリで発表された際、欧米のメディアを一斉に注目させた穴あき服の一つである。
このとき山本は「一生に一着しかない服が生活していくうちにはぎ合わされ、日や雨にさらされ、ほつれていく、無意識の美、自然の美しさを持つ服を作りたかった」と述べた。美の停滞を嫌い、それを意識しようとしない怠慢を否定しつつ、現代の日常生活に依拠した服作りを行う山本の独自の姿勢は、その後も一貫している。