前身頃の幅を減らして両袖を前方に付け、工夫された裁断線で平面的に構成された衿なしのジャケット。この完全に平面的な構造のジャケットは前身頃の幅の狭さのために胸ポケットが歪み、縫製後にかけられたプレス加工によって皺がはっきりと残っている。未完成の服や古着を再構築した服、あるいはストックマンのボディを象ったジャケットなど、他のデザイナーとは異なるアプローチの服を数多く作ったマルジェラの実験精神が本作品からも窺われる。
本作品が発表された1998年春夏コレクションは、コム デ ギャルソンとのジョイント・ショーで開催された。1980年代以降、常にファッションの前衛に立ち続けてきた川久保玲と、彼女からの影響を公言するマルジェラとの組み合わせは理想的なカップリングだった。本コレクションではモデルに服を着せず、ハンガーに掛かった服を白衣を着たスタッフが見せるという、平面的な構造がよくわかるプレゼンテーションが行われた。