1800年代のモネは、フランス各地に長期のスケッチ旅行に出る一方、83年の4月末にジヴェルニーに移り住んでからは、旅と旅の合間に、その近辺にもモチーフを探し求めている。本作品も夏にノルマンディー海岸を訪れた後の9月初旬に、ジヴェルニーより5キロほどセーヌ河を上った左岸に位置するジュフォスで描かれている。まだ夏の名残をとどめる明るい日差しが水面や中州のメルヴィル島を輝かせる一方、山のこちら側や手前の川岸は日陰になり始め、光の色も刻々と青みを帯びていき、「午後の終わりの印象」という原題どおり、夕暮れが迫っていることを感じさせる。そして、日差しが、長いストローク、短い点描のタッチの違いにより描き分けられ、風景を的確に示す一方、タッチの集まりが自律的なリズムを刻んでいる。木々の緑色に、初秋の冷たい空気を感じさせる紫色を対比させる、すなわり、光のさまざまな表情を色のコントラストによって描き出す方法は、モネの鋭敏な目によって作り出されたものであり、見るものは風景の中にそれまで気がつかなかった光の色を発見することになる。モネは本作品と同じ構図で異なる光の状態の作品を描くなど、風景の多彩な変化と格闘しつつ、80年代末には連作という手法に向かう。