中幅の画題は、中国の故事に由来する。諫鼓は、唐の堯王が、人民からの諫言があればこれを打って通ぜしめるとして朝廷に立てた太鼓であった。ところが善政のもと、打ちならすこともなく太鼓は苔むし、これにとまる鶏が音に驚くこともなかったという。この作品では苔はえがかずに、わずかに紅葉した蔦を太鼓にからませている。左右の幅は、松の梢にかかる太陽と、竹林からのぞく月をえがく。月は、円形に素地をのこして周囲に淡墨を暈かす、外隈とよばれる技法をもちいてあらわしている。竹は、輪郭と節を墨線でつくり、緑青を塗っている。この図のように竹幹を明確にえがきながら、根元や先端をかき消すようにえがかないのは、狩野探幽にはじまる江戸時代狩野派の手法である。