元信(1477~1559)は狩野派の初代・正信の長男で、同派の2代目。真・行・草(しん・ぎょう・そう)という3種類の画体方式を創始するとともに、己の影武者ともいうべき弟子を数多く養成することで、集団的な作画活動を可能ならしめた。と同時に、それまで大和絵系絵師たちの専門領域であった絵巻や風俗画、金碧画にも筆を染めるなど、狩野派に大いなる繁栄をもたらしたことが知られる。
本図はそんな元信の手になる山水画の好例で、真体手法によるところから「真山水図」と呼ばれている。破綻のない堅固な構成と細線を用いた丁寧な表現が際立っており、佳品の多い元信の山水図の中でも出色の出来映えを示す。いかにもプロらしい仕事ぶりといえよう。仙台藩主・伊達家に伝来した。