印象が初めて公募展に出品し、そして初入選を果たしたデビュー作である。制作にあたり、印象は京都南東の郊外地である深草周辺を実際に訪れ、いくつかのスケッチを残しているが、深草という特定の地を写生的に表現することよりも、むしろ収穫の終わった農村地の情景をセピア調のトーンで表し、晩秋の静けさを伝えようとしている。左右から中央に向かって微妙な歪みをもたせて描かれた画面は、観る者を不思議な遠近感の世界に引き入れる。西洋画の表現を積極的に採り入れ、線だけでなく色の濃淡による立体表現を用いた大正期の日本画の特徴をよく示している。