刺繍絵画が生まれた背景には、刺繍と同じくパトロンを失った京都画壇の画家たちの刺繡下絵への参画がありました。岸竹堂(1826~1897)、今尾景年(1845~1924)、竹内栖鳳(1864~1942)など、画家としても一流のものによる下絵、江戸時代より培われた名人の繡技が合わさり、空前絶後の技術を誇る素晴らしいし近代刺繡が生まれたのです。左は竹内栖鳳による日本画、右がそれを刺繡であらわした作品です。構図を忠実になぞりながら、筆における表現と糸における表現の違いが際立ちます。日本画のモチーフも日本的な花鳥図や風景図の他、西洋の絵画に範をとった動物画や人物画など新たにさまざまなものが取り入れられました。