道潜は、北宋時代末期に杭洲で活躍した禅僧です。詩人としても著名で、同時代の蘇軾(1063 - 1101)との唱和が知られています。この尺牘(書状)は、道潜が友人の淑通教授への返信としてしたためたものです。自分は昨年の12月から今年の8月まで外遊していて返事が遅れた、(淑通のことは)一時も忘れていていない、冬の寒さはどうか、伝道ほか体の調子はどうか、自愛せよ、という内容です。王羲之(303~361)に倣った筆法は、柔らかななかにも強靭さを感じさせます。道潜の唯一の遺墨として、また禅僧最古の墨蹟として、きわめて貴重な作品です。