パリのアカデミー・ジュリアンに入学。フランスの美術家のセリュジエ、ランソン、ボナール等と知り合い、〈ナビ派〉を結成する。単純化された輪郭線と平坦な色彩を特色とし、油彩画だけでなく版画、室内装飾、壁画、挿絵等の分野でも活躍した。『理論』、『新理論』、『宗教美術史』等美術に関する著作も多い。
ドニはゴーギャンの影響を受けた初期には装飾性と平面性の強い作品を描いていました。この作品は、初期の象徴主義的な静けさは抑えられ、色彩豊かな晩年の特色を伝えています。画中の人物は再婚した夫人と生まれたばかりの子供で、描かれた場所は赤いシャグマユリが咲き誇るブルターニュ地方にあったドニの別荘です。敬虔なカトリック信者であったドニは、作品において宗教と世俗を明確に分離せず、両者が交錯する世界を浮かび上がらせようとしました。それは現実の生活の中に、敬虔な姿や神秘性を見出すことであり、その理念にかなう母子の姿は、聖母子の図像を直接的に連想させ、ドニにとって格好のモチーフとなりました。