マハーラクシュミーは、ネパールなどのヒンドゥー教の八母神のひとり。「偉大なラクシュミー」という意味だが、吉祥の女神ラクシュミーとは異なり、火炎を背に武器をもつ勇壮な姿で表される。ウダヤ・チャラン・シュレスタは、ポーバ絵画の画家として技術を磨いた。ポーバとは、ヒンドゥー教や仏教の神仏を岩絵具で細密に描くネパールの伝統絵画で、チベット仏教のタンカの影響を受けつつ発展した。20世紀後半に西洋的な写実表現を取り入れた画家が登場するが、近年、彼はその傾向を強く押し進め、特に油彩を用いて、青や赤の肌に多眼多臂の神仏たちをより緻密で写実的に描くようになる。この女神も神でありながら、腰や豊満な胸など現代的な感覚に基づく官能的な姿態と妖艶な眼差しをもって描かれている。作者は、現実には見ることのできない神仏の姿を、超絶的な技法で、CGよりもリアルに提示して見せる。