中国五台山は、昔、非常に気候が悪く、人々を苦しめていた。修行のため、この地を訪れた文殊菩薩は、気候を変えようと決意し、空気を潤すという不思議な力を持つ歇竜石(けつりゅうせき)を手に入れるべく、龍宮城に住む、龍王のもとへ向かった。
龍王は一度は断ったものの、文殊の強い願いを無下にできず「このとても重い石を一人で持ち帰ることができるなら差し上げよう。」と答えた。それを聞いた文殊が呪文を唱えると、巨大な歇竜石はあっという間に小さな石ころに変わり、文殊はそれを袖に入れ飄然と去って行った。
これを見た龍王は目を丸くして驚き、大いに後悔したという。
五台山に戻った文殊が歇竜石を谷間に置くと、そこは瞬く間に涼しい天然の牧場と化した。
以来、五台山は別名清涼山と呼ばれ、今では風光明媚な観光地として多くの人々が訪れ、文殊と龍王の物語は五台山の伝説として長く語り継がれている。