縮尺5千分の1で描かれたこの地図には、19世紀後半の兵庫・神戸の膨大な地理情報が集積されている。1868年の神戸開港によってうまれたこの双子都市の間には、本図に見られるように湊川が流れていたが、1901年に兵庫の西方に流路が変えられた。地図内に記された説明によると、内務省地理局は神戸での実測を明治9年(1876)に始まり同10年に完了。その成果に基づき同14年に本図が完成した。同時期に同局がてがけた「横浜実測図」とともに、明治前期の大縮尺都市図の精華というべき地図であり、地理情報の正確さばかりでなく、グラフィカルな美しさも際立っている。近代洋画のパイオニアのひとりであり、内務省地理局の地図事業を担ってきた岩橋教章がオーストリアで取得してきた地図表記・印刷技法が駆使されている。