第13回帝展出品作。バルコニーの手すりに腰掛ける女性は、レースを用いたドレスをはじめ、帽子、靴、傘など小物に至るまで、最新のファッションで身を固めている。彼女の見下ろす街の風景は、淡い色使いながらも非常に細密に描き込まれている。港に浮かぶ大きな船、西洋風の建物や車、そして喫茶店に憩う人々や扇風機を使う人など、港町横浜の光景の中に西洋文化、そして近代的な生活への憧れが映しだされている。ドレスやカップのデザインには、当時日本に伝わってきたアールデコの様式の影響を見ることができる。
山田喜作(1900-1963)は東京に生まれ、凸版印刷の図案募集で入選したのをきっかけに鏑木清方に入門。伊藤深水にも学んだ。1931年 (昭和6)、第12回帝展に逗子の別荘地を舞台とした「湘南初夏」(島根県立石見美術館所蔵)が初入選。明るい色づかいと精密な筆致で、モダンライフ楽しむ女性の姿を描写した。