精緻な美しさを誇る人形調度、すなわち雛道具類の一群である。泰平の江戸の雛祭から誕生した見事な工芸であり、また驚異のミニチュア世界である。 中でも、江戸上野池之端の七澤屋が作り出す、芥子細工と呼ばれる超小型の雛道具は、その精緻な美しさにおいて、他の追随を許さぬものであった。
ここにある雛調度は、江戸時代の大名家の婚礼調度をうつしたもので、硯箱の内容品、歌留多や将棋の駒まで、忠実に作られていることがわかる。また、貝合わせの貝は、蜆貝ではなく、実際に使われる蛤の、赤ちゃん貝を揃えて作製するなど、細部までの徹底したこだわりが見て取れる。