内行花文鏡は中心に向かって内側に膨らむ円弧(花弁)を連ねて主要の文様とした鏡。中国後漢代に盛行した鏡で、中国では連弧文鏡と呼ばれ、円弧が八個で表される。本品は、後漢鏡を模倣した製鏡(国産鏡)で、中央の丸い突起(鈕)の周りにある四葉文を、櫛歯文で挟む素文圏帯と珠文帯で囲み、文様の主体となっている八個の円弧(八花文)の間には変形した結紐文を入れている。八花文の外周をめぐる雲雷文は丸い文様(円圏)を小さな突起(乳)に変えた文様となっている。文様構成のバランス、鋳上がりなど全てにおいて優品の特徴をもつ。本鏡は、鳥文縁方格規矩鏡と並んで、古墳時代前期の仿製鏡の中でも最上級の鏡とされている。