三徳山には、信仰によって結ばれた人と自然の良好な関係が今も持続し、地域に守り伝えられた生活と文化が残されている。そこでは、「人と自然の調和」という思想が表す信仰の空間として、時代を超えて人と自然との関わりを示す文化的な景観を感じ取ることができます。ブナをはじめとした良好な自然林の中を、急峻な地形を縫うように国宝「投入堂」に至る行者道には、地形を巧みに利用した一筋の道があり、周囲の自然を変えることなく、その地形と一体化したように建てられた建造物が配置されている。三徳山特有の自然環境の中に神仏を見出し、自然環境との調和を目指す優れた設計思想を現わしている景観は、開山して千年以上の時を経た今も、訪れた人びとに深い感動を与えている。