《創造と破壊の神話Ⅰ》はふたつの部分からなる。「死体─豊饒の角」は、自らの爆発によって宇宙を創生した<第一の牛>が、レンブラントの有名な絵画を思わせるように逆さ吊りになったものである。その体内からは稲の神ブロルが、永遠の収穫を見守り続けている。足元には、死んでしまったどくろたちが、五線譜の上に音符のように並んで、「日の出の歌」を歌っている。歌のかたちで新たな生命を生み出そうとしているのだ。アグネス・アレリャーノによる、暴力と破壊と死に彩られた残酷な物語は、実は誕生や再生のイメージに支えられたものだ。破壊は誕生によって、死は再生によって、常にあがなわれる。作者は、ギリシャ神話の豊饒の角(コルヌコピアイ)からフィリピンの民俗神まで、世界の神話イメージに拠りながら、創造と破壊の新たな神話を紡ぎ出す。