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夜汽車

赤松麟作1901

東京藝術大学大学美術館

東京藝術大学大学美術館
台東区, 日本

明治30年代の三等列車内をリアルな描写と複雑な光の構成によって描き出している。庶民風俗に向けた作者の暖かい視線が感じられる。

 窓の外の白んだ空が夜の静寂を越えた長旅の経過を知らせている。それは同時に退屈と疲労の残る車内の空気にも感じ取る事ができる。老若男女各層の乗客たちが各々の姿態で時を過ごすなか、さらに複雑な光が交錯して人々にからむ。赤茶けた車内燈、窓の外の光、そしてキセルを持つ老人の手許を照らす一瞬の閃光である。本学西洋画科を卒業後、三重県で中学教員をしていた赤松麟作は、明治34年(1901)の第6回白馬会展に本作を出品、白馬会賞を受賞した。明治30年代の三等列車内の光景に時代活写の鋭い視線を注ぎ、黒田清輝に学んだ光の表現法を応用して複雑な陰影を見事に描き切った。また人物の遠近を描き分け、影だけの男を存在させて群像のバランスをとるなど、画中人物の構成にも独自の工夫が見られる。教員や新聞の挿絵画家を経た後、明治43年には大阪梅田に赤松洋画研究所を開設。門下に佐伯祐三を輩出するなど、関西洋画壇の発展に貢献した。(執筆者:左近充直美 出典:『芸大美術館所蔵名品展』、東京藝術大学大学美術館、1999年)

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