わずかに胴張りする鐸身に、斜格子の縦帯と、斜格子文と連続する渦巻文の2段構成の横帯とを田字形に交差させて鐸身面に4つの区画(四区袈裟襷文(けさだすきもん))をつくり、裏表合わせて8画面に人物や動物、昆虫などの絵画を描き、鐸身の裾にも 子鹿を伴い列をなす鹿列を描いた絵画銅鐸である。
A面とした左上にはクモと四足動物が、右上にはサカナをくわえるサギ、左下にはⅠ字形具をもつ○頭の人物、右下には弓を持ちシカの頭を押える○頭の人物が鋳出されている。その裏面のB面左上にはトンボ、右上にはカマキリとクモ、左下にはイモリ、右下にはスッポンの図を鋳出している。
これらの画題の描き方には5号銅鐸と共通するものがあり、スッポンやカエル、イモリなどは真上から見た姿を描き、シカやサギやカマキリ、サカナなどは側面の姿を描いている。人物では、○の頭と△の頭とを描き分け男女を表現したものと考えられている。
絵のある銅鐸は、発見された約500個のうち、約1割程度である。4号銅鐸や5号銅鐸の様に袈裟襷文のすべての区画に絵画文があり、画題の特徴や鐸身の形態がよく似ている銅鐸が他に2例ある。江戸時代に香川県から出土したと伝えられている銅鐸(東京国立博物館所蔵)、江戸時代の画家、谷文晁が所蔵していた銅鐸(所在不明)である。これらの4例の銅鐸は、一人の工人あるいは、一つの工房内で作られた四連作の銅鐸と考えられている。