4号銅鐸の袈裟襷文とは異なり、鐸身を縦に区分する横帯が斜格子文と綾杉文の2段構成の文様帯となっている。 A面の左上には、カエルの右足にくい付くヘビと棒を持つ人が、右上にはカエル・クモ・カマキリ、左下には△頭の2人の人物の間に分け入る○頭の人物、シカの角をつかみ片手に弓を持つ○頭の人物が鋳出されている。B面の左上にはⅠ字形具をもつ○頭の人物とサカナ3匹が、その右にはトンボとイモリ、左下にはサギとスッポン、その右下には△頭の人物が2人で脱穀作業をする姿が鋳出されている。
4号と5号銅鐸、伝香川出土銅鐸、谷文晁旧蔵銅鐸に鋳出された絵画をどう解釈するかは諸説ある。これまでの狩猟・漁労の生活から、農耕を主体の生産手段とする社会への転換を讃える農耕讃歌を描いたとする説が有力であるが、この銅鐸より以前に製作された1号銅鐸の画題の多くを引き継ぎ採用していることが興味深い。銅鐸の絵画を読み解くことは、弥生時代の社会全体を読み解くうえでの重要な一視点である。