縫箔(ぬいはく)
刺を施した小袖型装束である。金銀箔を加えるものと加えないものがある。唐織に次ぐ豪華な装束で、文様は草花を中心に多岐にわたる。女性の役の腰巻の他に、貴族・童子などの着附に用いられる。
この一領は、白繻子地を白と紅の段に絞り分けて染め、その上に雷文と亀甲文を摺箔し、蒲公英と雪輪が繍い出だされている。蒲公英は、春の七草の一つで、早春の寒さを表すため、しばしば雪輪と対にして用いられる。雪の結晶を意匠化した雪輪文の中には、桜・松に藤・竜胆・萩など四季の花が配され、その一年の豊かさを予祝するかのような意匠となっている。