日本には、正月に羽根つきというバドミントンに似た遊びをする風習がある。羽根つきでは、木の板でできた羽子板というラケットを使う。普通羽子板には、歌舞伎の役者などの絵が描かれている。押絵羽子板は、羽子板を室内の装飾品として製作したもので、絵を描く代わりに、人物などの形に切り抜いた台紙に綿を乗せ、これを美しい織布で包んで作った部品を組み合わせて半立体的な造形を着けたものである。東京都や埼玉県で作られている。贈答品としても用いられる。この資料は敵討の物語として有名な歌舞伎演目「矢の根」(やのね)の登場人物である曽我五郎(そがごろう)を題材としており、顔の隈取(くまどり)という化粧に、正義感や力強さが感じられる。歌舞伎を題材とした押絵羽子板は、江戸時代後期の文化文政期に江戸(今の東京)で生まれ、今日でも製造されている。埼玉県指定文化財。