若い娘としての母と画家

ジャン･シャオガンは、自身の家族や見知らぬ他人の写真をもとに描いた作品で国際的な人気を得ている作家である。最初期のこの作品では、錆びついたようなフレームの内に、古い白黒写真から描きおこした娘時代の母親の姿と作者の自画像を収めている。人民服を着た母親がセピア色のベールの向こうから静かにこちらを見つめる隣で、非現実的な黄色い顔の作者は異様な存在感を放ち、病的でさえある。二人の血縁を示す赤い糸は、天安門を映すテレビ、秘密めいた木箱、どこか悲しげな薔薇にも結びつき、家族の秘められた物語と国家という「大家族」との複雑な血縁関係が暗示される。頭上の楽譜は制作時に流行していた台湾の歌謡曲で、刻々と変化する天気予報のモチーフとともに、時代の移り変わりが示されている。