黒のシンプルなシルエットに細く白いメッシュ模様が全面にあしらわれたスーツ。不規則にかすれ、一定間隔で球状に変形する織り柄は、コンピュータ・グラフィックス(CG)で作成された。
中川と阿世知は1992年にブランド「ベリッシマ」を設立。94年に「20471120」へと改称した。アニメや特撮ヒーローをモチーフにしたユーモアに富んだ服作りと、サーカス場や遊園地、ヘリポートなどで開催する大規模でエンタテインメント性の高いファッション・ショーで注目を集める。また、人型のキャラクター「HYOMA」を創作し、ブランドのアイコンとして活用したり、不要になった服をデザイナーがリメイクする「リサイクル・プロジェクト」を各地の美術館で開催するなど、ハイ・ファッション、ストリート・ファッション、サブカルチャー、アートといったジャンル間の敷居を低くすることに貢献した。
本品が発表された90年代半ばは、高性能ゲーム機「プレイステーション」や汎用OSソフト「Windows 95」が登場し、インターネットやCGなどの情報工学分野が一般に普及し始めた時期。デジタル化へ向かう社会を敏感に感じ取りながら、CG処理した画像を最もアナログな織り柄で再現するところに、このブランドのウィットが感じられる。