様々な仕掛けをほどこした遊び心あふれる作品群で近年高く評価される江戸後期の浮世絵師歌川国芳(うたがわくによし)(1497~1861)の代表作のひとつで、同趣向の人体合成画シリーズのうちの1枚。人が集まって人の顔かたちになるいわゆる寄せ絵の発想であるが、人体の組み合わせかたやポーズが滑稽(こっけい)で、それでいてきちんと顔に見えるように配置させてあるところに感心させられる。裸の男性の背中からお尻を使って鼻を作る大胆さ面白さは国芳独壇場の表現であろう。かつてテレビでこの顔を実際の人間で再現してみせた番組もあった。
ところで、この作品は画中の名主印(なぬしいん)より弘化4~嘉永5(1847~52)年の時期の作とわかる。また画中には「大ぜいの人がよってたかってふといゝ人をこしらへた とかく人のことハ人にしてもらハねバゝ人にならぬ」などと教訓めいた解説がついている。現存する同作品の中では着物の紫色がよく残る保存状態のよい1枚である。【ID Number1993B03841】参考文献::『福岡市博物館名品図録』