本作は、旧柳川藩主立花家に伝来する画巻ですが、いつの時点で立花家に入ったのか、誰の所用品であったのかは不明です。大名家の伝来品にふさわしく、絹本に上質な絵具で細部まで緻密に描かれた入念の仕上がりで、作品全体に流れる温かで穏やかな雰囲気と品格を備えた第一級の大名道具といえるでしょう。第五紙の終りに描かれている画中画(水墨山水図の屏風)に記されている落款がこの春画の作者のそれと考えてよいでしょう。「法橋琢眼筆」とあることから、江戸時代中後期に京都で活躍した狩野派の絵師、勝山琢眼 (一七四七〜一八二四)が法橋位にあった時の作品と考えられます。