カンボジアの伝統的な染織である絹の緯絣(よこがすり)は、東南アジアの絣のなかでも図様の精巧さ、華やかさで突出した存在といえます。綾織りで織られているため、表面にすばらしい光沢がでることもカンボジアの絣の特徴のひとつです。特にピダンと呼ばれる寺院の壁掛や天蓋布は、高度な絣の技術によって、絵画的な表現が見られることが大きな特徴です。この作品も仏像の背後に掛けられた壁掛のひとつですが、獅子や象、寺院や仏陀、半人半鳥のキンナラなどが細やかな絣の技術で表現されています。絣の技術もさることながら、象の目鼻や輪郭、キンナラの顔などが、確かな技術で描き込まれていることも、ほとんど他に類例がありません。カンボジアの絣を代表する作品のひとつです。